社内でHCDワークショップ5:ペルソナシナリオ法

5月11日、1ヶ月半ぶりのHCDワークショップ開催でした。

これまで行なってきたことは「検証(評価)する」だったとすると、これからの3回は「作る」というところです。
いかにも「Goal-Directed Design」らしいところに突っ込んでいきます。

今回はカメラを忘れてしまいましたので、写真はナシです。詳しい様子は講師の浅野先生のブログでどうぞw。

当日の流れ

タイムテーブル。端的にいうと、ペルソナを作る回。

最初に「ペルソナシナリオ法やったことある人?」というと、社内の人で手が上がった人はいなかったと思います。
先入観がないということで、とてもいい!w というスタート。

短期間のワークショップでは、ソリッドなファクトベースで進めることは難しい。ので、手順がつかめず悪戦苦闘するチームも。
でも、最後に評価グリッドが形になってくると、「ああ、こういうことね」とハラオチ感が出てきたと思います。ユーザーのゴールが構造として理解できる、もっともハンディな方法だと思います。

ペルソナシナリオ法のワークショップって難しいよね、という話と、ビジネスニーズの明示という話

写真もないので、その他細かい紹介は省略しますw
かわりに、ペルソナシナリオ法のワークショップそのものについての気づきを書きたいと思います。これまで、参加者としてペルソナシナリオをやるときも手応えを感じつつもフラストレーションが高いと感じていました。今回、自分がホスト側として関わってはじめて見えてきたことがあります。

端的にいうと、ペルソナを作る回なのですが、それがワークショップとしては難易度が高いのです。理由は2つあります。

理由1:HCDプロセス中の大きな範囲を取り扱う

どういうことかといいますと、今回だけで、HCDの4活動中、2つを一気にやっているのです。

それは上図でいう、「利用状況の把握と明示」「ユーザーの要求事項の明示」です。

  1. 「利用状況の把握と明示」は、今回のワークショップでは半構造化インタビュー。を二人に対して。
  2. 「ユーザーの要求事項の明示」は、問題シナリオ、ペルソナ、そして事象のラダリングから導く要求事項の階層構造データ。

1.利用状況を明示するには、「ユーザーはどのような人」「どのような環境(物理的環境、ステークホルダー、等)にいるのか」「ユーザーのゴールとタスクは何か」が少なくとも明らかにされていなければなりません。この「調査」だけで様々な種類があり、その中でもインタビューを採用したということです。
実際には、 定量/定性調査をかけあわせて行うことが好ましいケースが多いです。

既存事業に関するリニューアルがお題ですので、ある程度定量データがある前提だったりもします。でも、浅野先生が「最低の手段」というインタビューから開始したことで、

「ユーザー調査ってインタビューをするもなんだ/インタビューが大切なんだ」
「インタビューしてやってみたけど、なんだか役に立たなさそうだなあこれ」

と受け止められてしまう可能性が高いとおもいます。
幸いに参加者数名と話した限りでは、「ワークショップだからこうだけど、実際はちゃんとやるんだよね(もっとリアル属性な被験者で、ちゃんとしたインタビューで、人数も増やして・・・やるんだよね?)」と割りきって受け止めてくれていたので、大丈夫かなと思いました。杞憂。

2.ペルソナシナリオの導出についても同様です。調査結果がソリッドでない、という流れからくると、ある程度作り手の想像力でその場は補わなければならない部分が大きくなるため、「仮説」よりのペルソナになりがちです。

ペルソナが「架空」「仮説」的な扱いになってしまうと「ゴムのユーザー」と大差ない存在になってしまい、余計混乱をきたします。

ここも「ワークショップだから」的な割り切りがないと、「これがペルソナシナリオ法のすすめ方か」と思ってしまうのではと不安になりました。
※仮説ペルソナがダメということではない。近年話題の「リーンスタートアップ」等で登場する、「仮説ペルソナ」を作る→1週間以内に必ずそれを殺す(=「ファクトペルソナ」に置き換える)流れが前提であれば、必ずしも問題ではない。

ファクトデータをそのまま関係者が読みといて円滑にプロジェクトを進められるのであれば、ペルソナなしでシナリオから仕様まで落とすことが可能。だがそれが困難であれば、「ペルソナ」という抽象的な存在にコンバージョンしたほうが良いこともある(実際に、便利である)。

という理解からスタートしてもらえたら、思います。
このへん、このワークショップシリーズが終わったら振り返りで気をつけたいとおもいます。

対策

今後またやることがあれば、そうしたいなあと思うことをとりとめもなく列挙してみます。

  • 定量データをきっちり用意しておく:あくまでファクトを抽象化するんだということがわかりやすいかなと。
  • ペルソナなしでシナリオを作ってしまう。同じ課題を、今度はペルソナシナリオで作ることで、意義を体感する。
  • インタビュー計画を立て、被験者にフォトエッセイやフォトダイヤリーを用意してきてもらう:これは事実ベースの調査ができるのでぐっと精度が高まる。

結論:準備がすべてw

理由2:「人間中心設計プロセスの計画」部分の存在

「計画」とはその名のとおり、上手のような(円形の)イタレティヴなプロセスを、具体的にどのように進めるのか?を設計することです。
ここについては、この一連のワークショップでは行いません。それ自体はよいと思っています。
ただ大切だと思うのは、「計画」するより以前、「そもそもなんでHCDプロセスを回そうと思ったのか?」ということです。

私の考えでは、「ビジネスニーズを明示すること」が何より重要です。
今回のワークショップでは、「自分のサービスをリニューアルする」というお題です。
起ち上げプロジェクトであれば、「こんなビジネスチャンスがある、やったら儲かるんじゃない?」「こんな機能があれば、ユーザーが喜んで使うのでは?」 といったものです。

この「ビジネスニーズ」が、後のプロセスすべての「制約条件」として働きます。制約が本質です。
制約がクリエイティビティを高め、イノベーションを生み出します。

仮に制約がなければ、HCDプロセスは答えのないユーザー満足という出口のない無限ループに突入します。
(実際には無限ループではなく最初の調査フェーズで工数が無限大になってしまうので、「あれ、わかってないや?」と計画に立ち戻ることになりそうですね。)

実際の現場では、ここははっきりしている(はず)のですが、ワークショップだとボンヤリしがちです。

対策

より具体的な指標レベルの細かいビジネスニーズに絞り込んだお題にする。
例えばコンバージョン改善レベルの題材でやってみるなど。

 

ワークショップは残すところあと2回。次は僕が一番好きな構造化シナリオ法!これさえできればなんとでもなる!(笑)

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