複数視点から真実に迫る

「ほんっといまさらだな」
と呆れられそうですが、
ほんっと今さら、この本を読みました。

600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス

読むのが遅い僕でもなんと1時間ちょっとで読了してしまう快読本でした。

人とは違う感想

これまで多くの方の感想をみたり聞いたりして、それは「徹底したユーザー視点がすばらしい!」という内容。
そもそも、著者が「この謙虚さが!」「このお客を大切にする姿勢が!」という形で締めくくっていますし、そういう筋書きで編集されているかと思います。

でも、僕はわりと違う印象をうけました。

ひとつは「ユーザー視点がすばらしいよね、見習おう!」という感想をもつのはダメだということです。「ユーザー視点」という言葉がわりと漠然としていること。またそれゆえ、「アクションにつながらないでおわるのはいやなんです。一般の人ならまだしも、この世界で仕事をしている自分がそれで終わるのは気持ち悪いです。

それから、佐野さんのインタビュー内容だと、さほどユーザー視点で突っ切ってきたわけではないと思いました。
「この笑顔であふれた世界にしたい」という明確なビジョンと、「事業として成り立たせるんだ」という挑戦、特に「どうやったら儲かるんだ」というのが強かったような印象をうけました。がゆえに、徹底して使われるモノを作るという手段に出たのかと。

それは、彼らを言い表すとしたら、世の中でいわれる「お客様第一」と、言葉としては同じかもしれない。けれど成り立ちは違っていて、「こんな世界にしたい」に最短距離で近づく方法が、「ユーザー」と「クックパッド」のかかわりを徹底的にサイエンスすることだった。それしか考えられなかった。ということなのではないかと思いました。

「顧客視点でいいものさえつくれば、結果はついてくる」という、有り体な言葉は真実だと思うし、そうありたいとは思いますが、いざ実際に商売をつくりあげていくときに吐く言葉としてはあまりにもリアリティがないし、きっとそうじゃないなあ、とこの本を読んであらためて思いました。

複数視点からユーザーの真実に迫るから速い

で、やっぱりすごいなあと思うのは、佐野社長自身がユーザーをとても理解しているということ。
ユーザーテスト、独自開発のアクセスログ解析、といったことをやり尽くしているから、自信を持って「こういうことで困る。こういうことを求めているはず。」ということがわかる。

独自開発の「ウォークスルー」という解析システムが、完全にユニークユーザーの動きを再現するもの。塊としてセッションやPV単位で探り、ページ単位で最適化をしようなどという姿勢が毛頭ない。ユーザーのインタラクションそのものを再現し、分析し、改善する。もちろん、統計的にも。

またユーザーテストで生のユーザーがサイトを使う様子をたくさん見ているから、数字の傾向に終わらない、「なぜ」の蓄積がある。だから、アクセスログ系のツールを使ったときの理解も早くなるし、仮説の精度も高くなる。

真実に迫るときには、必ず複数の視点からとらえなければいけない。といいますが、そういうことだよなと、思うわけです。
新人にいきなりアクセスログ解析させるのは大きな間違い。まるで勘違い。へたにできちゃうと、数字であれこれ考えられてえらくなったような気になっちゃったりなんかして。そんなものは本当の事業スピードには程遠いはずです。最初に生のユーザーと対峙させなければ、なんのリアリティもないのではないでしょうか。それが数字としてどう現れるかを見ていくほうが、よっぽど生産性が高いのでは。

新人に限らず、アクセスログだけではダメ、ユーザーテストだけでもダメ。複数の視点からとらえたその中間にきっと、真実があるのではないでしょうか。そのとき、我々の歩む速度が、最大になるのではないでしょうか。
「おいおい、そんな当たり前のこと」とこれまた呆れられそうですが、あたりまえのこと。それがすべてだよなあとw最近思うわけですw。